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INTERVIEW

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2023.04.17

総合通販大手が考える、シニア市場とECのこれから

株式会社ベルーナ マーケティング本部マーケティング室係長

出来宏崇

ハイミセスを中心とした2,200万人以上の登録会員を抱える総合通販大手・ベルーナ。ECビジネス隆盛の時代にあって紙のカタログへのこだわりでも独特の存在感を示す同社が、シニア層に支持を得る理由とは? 株式会社ベルーナ マーケティング本部マーケティング室で、通販・店舗の新規顧客開拓チームの責任者として、幅広い広告メニューを用いたプロモーションを担当する出来宏崇氏にお話をうかがった。

PROFILE
出来宏崇
2005年に株式会社ベルーナに入社。自社ECサイトのシステム開発とサイト刷新プロジェクトに携わった後、2011年よりマーケティング本部でプロモーション全般を担当。2019年より現職。

コロナ禍の巣ごもり需要で通販利用者が拡大

―最近の通販業界の動向を教えていただけますか?

出来 コロナ禍による巣ごもり需要が通販業界の追い風となり、当社では2021年3月期に売上と当期純利益が過去最高を計上しました。ただ、コロナ禍が落ち着いてきてお客さまがリアル店舗に向かうようになったことや、景気の問題もあって、2021年の半ばくらいから売上が鈍化しています。世界情勢の悪化をきっかけに、電気・ガスや食品の価格が上がり、アパレルの消費が後回しになっていると感じます。原材料費も高騰していますから、商品をお届けする私たちの側にも厳しい環境ですね。

―出来さんのお仕事の内容をお聞かせください。

出来 ベルーナの購買チャネルには、紙(チラシ・カタログ通販)、店舗、インターネット(PC・モバイル)、テレビがあります。マーケティング本部では、商品企画部が企画した商品の売上を最大化させるために、これらの広告メニューを使ったプロモーションを行っています。私のメインの業務は新規顧客の開拓で、新聞・テレビの活用のほか、スーパーや百円ショップなどのお店にカタログを設置させてもらうといった取り組みを行っています。

―新規顧客の開拓の難しさはどんなところにあるのでしょう?

出来 本来は新規顧客開拓のための施策である折り込みチラシや、スーパーや百円ショップなどに置いたカタログで購入いただいた方のデータを見ると、実は休眠顧客(直近1年間の購入歴がない人)だったということが多いんです。最近はその掘り起こし率が高まっていて、本当の意味での新規顧客は、個人情報の記入に抵抗があるとか、通信販売というしくみ自体を避けている方が残っている状況だと推測しています。ただ、コロナ禍で初めて通販を利用してみて、そこからリピーターになる方も多いので、まずは体験してもらうことが必要だと改めて感じています。そのハードルをどう越えるかが今後の課題の一つですね。

―EC全盛の時代にカタログ通販を重視する理由

―御社は多くのブランドをお持ちですが、プロモーションに違いはありますか?

出来
当社のブランドは基本的に年代別になっています。シニア向けは紙(カタログ・チラシ)が中心、若い年代向けはSNSなどを使ってネット購入への誘導を図っていて、20~30代向けの「GeeRA」では紙のカタログは発行していません。40代向けの「Ranan」ではネットと紙の比率がおよそ半分ずつ、さらに上の世代では紙の比率が高くなっていきます。最も高い年齢層を想定した「ルフラン」は折り込みチラシからの新規顧客が多いですね。

―ECが主流とされる中で紙のカタログを重視するのは、シニア世代を念頭に置いているからでしょうか?

出来 ネットでの買い物が苦手な方に紙のカタログをお届けして、紙や電話で注文いただくことを得意としているのは確かです。ただ、シニアのお客さまが多いのでカタログを重視している、というわけではないんです。
通販ではお客さまの購入履歴が詳細に分かるので、「過去にこんな物を買っていただいたから、今度はこれをお勧めしよう」という具合にカタログのページを差し替えていき、個々のお客さまのニーズに合ったカタログをお送りしています。当社ではアパレル・雑貨事業だけでカタログとチラシが1年間で約350種類、デザインやパターンの違いも含めるとおそらく1,000種類以上あって、1回の郵便物に封入するカタログ、チラシで10万通り以上の組み合せがあります。私たちとしては、利用される方のニーズを汲んだ媒体を目指すうちにこうなったという認識で、商品もボリュームゾーンに向けた開発を続けた結果、シニア向けが多くなったのが現状です。

―シニア向けということでなく、個々の顧客に対応した結果ということですね?

出来 そうなんです。ベルーナグループの経営理念では、「お客様の衣食住遊を豊かにする商品及びサービス」と謳っていて、シニアに特化しているわけではありません。やはり基本は全世代に喜ばれることですので、むしろ若い世代を置き去りにしないように努力しているところです。もちろん、シニアの方に親しんでいただけるのはありがたい限りですので、商品を通してベルーナのファンになっていただく取り組みも強化しています。

岐路を迎えたアパレル業界、ネットで商品の魅力を発信

―今後も紙のカタログは御社の主力媒体であり続けるのでしょうか?

出来 ここしばらく、アパレル業界は価格競争に巻き込まれてしまい、かなり苦労してきました。しかし、低価格路線も限界が近づいていて、品質や商品の持つ価値の勝負に切り替わりつつあります。「ベルーナの新作」というだけで一定の方に購入いただける時代ではありませんから、これまで以上に、この服を着たいと思うストーリー、魅力をさまざまな角度から伝える必要があると思っています。ネットでは長尺ページでのていねいな説明や動画の活用もできますから、この点で可能性は広がると思います。商品の詳細ページに生地の良さをご案内する動画を埋め込むといった試みはすでに始めています。

―ネットへの注力はシニア世代を切り捨てることにはなりませんか?

出来 60代ぐらいの方は抵抗なくネットを使われますし、長らく紙のカタログで購入されていたシニアのお客さまがネット利用に切り替わるとか、最近ではシニアのネット比率も高まっています。コロナ禍を契機にネットシフトが進んだのは事実ですし、紙のカタログが減っていくのも間違いありません。ただ、まだまだシニア層はオフラインが中心ですし、紙のカタログとネットを併用する方も多くて、紙を希望する方はある程度残ると思います。基本的にはチャネルではなく顧客ファーストで考えていますから、紙、ネット、店舗のそれぞれのメリットをお伝えして、お好きなタイミングで、いつでもどこでも買い物を楽しめる環境作りを考えていきたいですね。

データをお客さまが発するメッセージととらえて

―通販のお仕事をするに当たって、出来さんが心がけていることは何ですか?

出来 通販は必ず個人情報をお預かりするので、どんなお客さまが、いつ、何を買ったかがすぐにデータでわかります。データを単なる数字として見てしまいがちですが、しばらく購入がないというデータに「それじゃあカタログをこうしよう」と反応するだけではなくて、お客さまが何らかのメッセージを発していると捉えて仕事をしています。通販ではお客さまとのリアルな接点が少ない分、肝に銘じていますね。

―リアルな接点といえば、ベルーナでは店舗も展開していらっしゃいますね。カタログやネットのお客さまと来店客では違いがありますか?

出来 店舗には当社の主要カタログである「BELLUNA」の売れ筋商品を置いて、その世界観をお見せするというコンセプトで運営しています。ベルーナの商品になじみのある方は品質などもよくご理解いただいているので通販の利用が多いのですが、その手前にはやはり実物を見たいということで、店舗と通販を併用される方も一定層いらっしゃいます。配送料や紙代が上がっていることもあって、店舗というチャネルは今後の展開の要になると思っています。

―全国に2万局ある郵便局をお仕事に生かすとしたら、どういうかたちが考えられますか?

出来 シニアの方が定期的に訪れる場所として魅力的だと思いますし、やはり2万局という数にはひかれます。売上を見込むとかお客さまを獲得するというよりも、お客さまの声を聞いたり、商品を体験していただく場になれば面白いですよね。